塔4月号作品2、若葉集

05 /02 2017
作品2
舞いこみし揚羽蝶を見てミチコかなと父が言い皆で蝶を見守る / 西村千恵子

冬の日のとおくの街のまちかどのたき火のようにこうばしい声 / 山名聡美

二時間に一台しかこぬバスを待つ川を覗いて空を見上げて / 越智ひとみ

詩がみえるように頭を空にして一人で歩くように働く / 吉岡昌俊

睡りいるほほを撫でれば睡りつつ笑う娘をどこかかなしむ / 丸本ふみ

「親父はもういないんだよ」繰りかえし弟は言う繊月の晩 / 奥山ひろみ

年末に整理していた雑誌には「両義的逃げ」と二度メモがある / 片岡聡一

白湯などを飲んで過ごさう震災日「治療しません」だつた歩ける人は / 大谷睦雄

若葉集
月よりも太陽になれと言われた日遙かになれど月のまま今 / 白梅

道端に唾吐きし人の図書館へ入りゆくまでをじっとみており / 魚谷真梨子

姉の家 人手にわたり軒先に洗濯物が多くたなびく / 髙山葉月

ゆふぐれに裸像冷えたり青銅の腿を叩けば冴え冴えと鳴る / 川田果弧

舞いこみし揚羽蝶を見てミチコかなと父が言い皆で蝶を見守る / 西村千恵子
 ミチコかな、の父の言葉の自然さが、そのままその蝶を見守る家族へとつながっていく。ミチコはもういないのだろう。ふっと舞いこんだ揚羽蝶。揚羽蝶のように美しいミチコというよりは、家族の団欒の場にふっと楽し気に加わるミチコの軽やかな性格のようなものを感じる。ミチコかな、と言う父のユーモアや大きさが伝わってくる優しい歌だと思う。

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ukaji akiko

塔短歌会。ふだんは赤煉瓦歌会に参加しています。気軽に好きなことを書いてゆこうと思います。

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