塔4月号

05 /01 2017
月集、作品1
白梅は見にゆかぬまま 読まざりしページのように日々の過ぎゆく / 吉川宏志

妹が逝きて一年になる もうどこからも電話かからぬ / 大田千枝

刃を入れて刃を返しをりいまだしばしかたまりきらぬ朝のなかに / 梶原さい子

いまどのあたりかと聞きてふたたび眠る人 夜の海ゆく車窓に映る / 久岡貴子

車椅子がぐるり囲めるテーブルの上で朝刊が夕刊を待つ / 松木乃り

闇を持つ人がいいなと言うむすめ二十三歳まっ白な歯だ / 中山悦子

「おばあちゃんはどうせ判ってないんやし」わたしの口が母の背に言う / 永田愛

この家の一部のごとく母ありき縁側の陽に温められて/ 中澤百合子

衝立の向かうは知り人らしき声ぷりぷり肥えたる牡蠣は煮えゆく / 大島りえ子

二十年われの心身受け止めて居間のソファーのバネ弛みたり /石井夢津子

給湯器またしゃべってる お湯張りの温度を一度上げ冬にする /上澄眠

ひとつづつ灯りを消してゆくやうに庭のみかんを朝々にもぐ / 尾﨑加代子

手の平に運勢を読む友人が駆け下りてゆく急な坂道 / 千名民時

役立った運転免許を返上し男がひとり歩いて帰る / 山崎一幸

二十年われの心身受け止めて居間のソファーのバネ弛みたり / 石井夢津子
  作者の心身、心のほうに比重があるように思うが、それを長いあいだ受け止めてくれていたソファー。バネの弛みは、その作者の心をもう受け止められない、耐えられないよ、というソファーの声ともとれるだろう。

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ukaji akiko

塔短歌会。ふだんは赤煉瓦歌会に参加しています。気軽に好きなことを書いてゆこうと思います。

プロフィール欄がなぜか二つになっていて直りません。

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