塔6月号 月集、作品1☆彡

07 /06 2018


雨がひどくて今日はこの辺りのほとんどの小中高校が休校でした。



(月集)
さようならはここにとどまるために言う ハクモクレンの立ち尽くす道 /江戸雪
「ここにとどまるため」に言う。ああ、たしかにそうだ、と思った。それ以上何も話さないハクモクレンが美しいです。

小雨降る弥生の朝春なのだ春なのだと思ふ空みあげつつ /大田千枝
少し暖かいような春の小雨がいいなと思う。「春なのだ春なのだ」がとても柔らかい。

わたくしの右胸にメスを入れしひと優しく老いて優しく笑まふ /梶原さい子
手術の後に過ぎていく時間。ふたりの間にだけ通じる気持ち、わかる気持ちというものがあるだろう。作者の気持ちが穏やか。

わかき日の冒険譚をくりかえす桃太郎こそ鬱陶しけれ /松村正直
昔話の桃太郎は自分で冒険譚を語ったりしないから、この桃太郎は現実の世界のことでしょう。すごい言われよう。「桃太郎」を登場させて歌が面白くなっている。


(作品1)
夜も更けてゆく道すがらひらがなの看板の字をふとおそれけり /遠田有里子
ひらがなの持つ曲線が生々しかったり、こっちになだれ込むようだったり。そのままの音で迫ってくる、ということもあるのかも。たしかに夜は怖い気がする。おもしろい歌。

言わざりし言葉の多き春の日は爪伸び易くやや深く切る /橋本恵美
爪の伸びたぶん、言いたいことも少し積まれているような。だけど、伝えることをせずにやや深く切ってしまう。「やや」の微妙な気持ち。

胸のなかの蛾と蛾が強くこすれあうしんと黙って抱きあうとき /大森静佳
「蛾と蛾が強くこすれあう」。胸のなかのその音を聴いている作者。蛾の持つ音の響き、きれいというのとは違い、そこからも昏さをともなう気持や動かしがたい想いがあるように感じる。

「あら、素敵」亡夫の使いいしボールペンすらすら書ける小畑実さま 
/小畑百合子

亡き夫への愛情がこういうふうに自然なところであらわれていて、さらっとした詠み方だけど胸にじんときました。

どなたかの鞄かかひなにあたりたりわたしはいまだうつし世にゐる /白石瑞紀
すこしほわっとした感じで歩いていたのかな。「どなたかの鞄か」の言い方もほわっとしている。その「どなたかの鞄」は腕に当たれば痛いもので、「うつし世」なんだと、はっとする。「いまだ」とあるので作者にとってここはそのうち通過する場所なのだろう。

梅の花をところどころで目に留めて駅へと向かう簡素なる朝 /徳重龍弥
作者の気持ちに余計なものがないから、街もそういうふうに見えるのだと思う。ところどころで咲く梅が、ひかえめながらぱっと目に入ります。

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ukaji akiko

塔短歌会。ふだんは赤煉瓦歌会に参加しています。スガシカオ好き。気軽に好きなことを書いてゆこうと思います。

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