塔3月号 月集☆彡

04 /07 2018

(4日前のブログに書いた飛んできた桜の花びら。表紙のどこかに置いてます)


昨日も、今日も風が強い。気温も下がり半袖でいい日もあったのにまたコートを着たりして。桜もとうとう散ってしまった。また来年ね。


死の迫る患者にひたと見られたる夫の顔か お帰りと言ふ /栗木京子
ひたと見られたる、という表現が死に触れられているように感じる。「お帰りと言ふ」が普通の「お帰りなさい」とは意味合いが違って聞こえる。

医師の飼うくらげが白く上下して静脈動脈の説明を聞く /前田康子
診察室にくらげが?それとも医師宅のくらげ?ふわふわと漂うくらげに対して、動脈静脈という規則正しい生命。一見くらげは儚いようでいて強いのかもしれない、脈々と太い血の流れて強そうな命がもろいような、不思議な印象をうけた。

風のなか眼が乾いてる海の辺にかわききったら涙流れて /江戸雪
なにかの痛みがきりきりとくる。「かわききったら」。かわききったら流れる涙にはどんな感情が宿っているんだろう。

犬が傾け男が戻す郵便箱 その繰り返しの一週間を観る /上杉和子
観察が面白くて、一週間それを見ていた作者も面白い。それがきちんと歌になることが面白い。

火のごとき友の逝きたり松ぼくりひとつ幼がわれにくれたり /大田千枝
友が逝き、その空間を埋めるかのように唐突に現れる松ぼっくり。松ぼっくりの黒くてカサっとした感じと「火のごとき友」の遠くて近いような繋がりがいいと思った。

黒猫と郵便局とエホバ来てしばしののちに初雪のふる /落合けい子
いろんなものが訪れて、しばしののちに訪れる初雪。それまで訪れていたすべてを覆うような静けさがある。

釣り好きのよき青年になりしらしペリカンよりも小さかりし孫 /酒井万奈
ずいぶん長く会っていない孫、ということが分かる。ペリカンよりも小さかったという表現が変っているけど、実際に昔動物園などに行った時の思い出なのだろう。

セーターがあいまいにする輪郭の冬の日のなか妊婦が光る /澤村斉美
ほわっとした雰囲気とともに、「妊婦が光る」の強さもあると思った。赤ん坊を包む妊婦、その妊婦を包むセーター。光る繭のよう。

糸たらし下りきし蜘蛛がたらしたる糸しまひつつ上りゆきけり /久岡貴子
塔誌では縦書きなので読んでいて尚更面白く感じた。縦書きで読むと、結句の上りゆきけりがほんとに蜘蛛が糸として一首を上っていくような錯覚。

老女より漢方薬のにほひたちわが返すべき辞儀おくれたり /村上和子
ふっと漢方薬の匂いのほうにとらわれた。お辞儀は自然と出るものだから、その自然を一瞬忘れるほどのことだった。

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ukaji akiko

塔短歌会。ふだんは赤煉瓦歌会に参加しています。スガシカオ好き。気軽に好きなことを書いてゆこうと思います。

プロフィール欄がなぜか二つになっていて直りません。

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