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塔9月号 作品2、若葉集☆彡

10 /14 2018
朝晩ひんやりとしてきました。スーパーは白菜が結構売れています。ほぼ毎日行くスーパーは明るくて活気があって、少し前、店員さんの制服にベストのようなものが新調されています。



いちご狩りだけが取り柄のこの町であなたは安い口紅を塗る /多田なの
小説や映画に繋がっていきそうな雰囲気があるな‥と思いました。きらびやかではない町と、そこに住む「あなた」と作者。町に馴染んでいるような「あなた」と作者の間には僅かな距離があるようにも感じます。

体温が同じ老女(ひと)ならみつかってみたい気もする本当の僕 /卓紀
どことなく不思議さ漂う連作でした。その中の一首。体温が同じというのは、物事の捉え方が似ているということに繋がりそう。「老女」と限定しているところも面白い。魔法使いのようで楽し気。

「をす」とある扉を押して昏いろの菓子舗にロシアケーキを需む /岡村圭子
「をす」や「ロシアケーキ」がレトロな感じ。ロシアケーキってウォッカなどをしみ込ませたしっとりしたケーキかなと思い(ブランデーケーキのイメージで)、一応調べてみたら全然違っていました。お花のように焼かれたクッキーの真ん中にジャムなどが載っているお菓子のことでした。可愛いクッキーで、お茶の時間を楽しむ作者が浮かんできます。

ここといって十分に知りたる街はなし他人にも吾にも甘く生き来し /高橋あや子
寂しさがある歌。人にも自分にも甘く生きてきたから十分に街を知っていない、深いところに触れていない、ということだろう。考えさせられる歌でした。

雨を踏み赤信号を渡る背ゆふべの夢の出口のやうな /東勝臣
昨夜の夢と、今見ている景色が繋がっている。作者が夢と現実とに挟まれているようです。雨、赤信号、背と不安定な言葉が迫ってくる感じです。


(若葉集)
打ち寄せる波のかたちがほんとうの地図ほんとうを踏む足の先 /泉乃明
「ほんとう」というものに作者の意識はいく。波というものは、来ては去る外の世界のものでもあるし、意識の内に滑り込むような音や形態を持っている。作者は自分の世界と外の世界の狭間で佇んでいるように思います。「踏む足の先」は「ほんとう」を大事にしたい作者の気持ちだろうと思う。

延命の治療のことを 窓半分あけて五月のひかりを入れる /岡田ゆり
二句目以降、延命については何も詠っていない。延命というものは一人一人に難しいことなのだろうと思う。人の心は、繊細で、言葉では言い表せないものを持つ。下句がとてもいいと思います。

4階のしずかな暮らし 住み込みの管理人さんはゆべしをくれる /拝田啓佑
4階という微妙な階。「しずかな暮らし」というのに合っているなあと思う。管理人さんがくれる「ゆべし」もまた物静かなお菓子で、歌のトーンがひっそりとしています。

スーパーの「お客さまの声」

ブログ
10 /05 2018

台風、福岡は明日が強風域とのこと。すこしづつ風が強まっている。

毎日のように行くスーパーに、「お客様の声」というものが貼ってあります。清算済みの商品を自分の袋に詰める台の右端のほう、ちょうど目線の高さにその「声」は貼ってあります。いつからか、書かれてあることが結構面白いことに気づき、そのスペースが空いていればそこの場所に行きチラチラ読みながら商品を袋に詰めてます。

今日なかなか面白かったもの、三つ。

「…それと、ペコちゃんのパンに塗るクリームはもう置かれないのでしょうか。あれを塗らないと子どもがパンを食べないのです!」
「レジの○○嬢は社員ですか。なかなか優秀と感ずる」
「…不思議なのは、切り落とし肉がありますが切り落とされた残りの本体はどうなっているのでしょうか」

一つ目は怒っているのではなくて、少しユーモアっぽい感じに読めました。パソコンでは伝わりませんが筆跡が若く丸みがあってそんな気がしました。二つ目の「○○嬢は社員ですか」の「社員」の文字が読みにくく、たぶんそう書いてあったと思う、と言うことををお断りしておきます。三つ目の「本体」というのは「切り落とし肉」の「切り落とし」じゃない部分、端っこじゃない広い部位のことを言っているのでしょう。本体とあったので一瞬なにかなと思いました。

だいたいこんなふうに商品のことについて書かれてあることが多いのですが、つい先日まで貼ってあったものにこんなのがありました。

「是非、FM○○と再契約してください。夜中に訪れた時に素敵なBGMのかかるmad chaserな△△(店の名前)が好きでした。今は残念でなりません」

mad chaserというのは何だろうと調べたけど分からず。音楽用語で何かあるのかもしれませんが。

いろんな人がいるなあと思う。再契約を投書した人は夜中にこの店を利用する職業か・・。学生か?おそらくたった10分かそこらしか滞在しないスーパーにも楽しみがあったんだ、と思った投書でした。

塔9月号 作品2 その1☆彡

10 /02 2018
今日はすっかり涼しかった。スーパーに買い物に行って、商店街には人がたくさんいるのに、ふっとさみしくなってしまうというのは日本人だからでしょうか。うわっと思って、一瞬あれほど暑くてこりごりと思った夏に戻りたくなりました。


我が歳の数だけ母の日はありてカーネーションは雨に濡れおり /深井克彦
明るい歌なのかと思って読んでいたので結句のさみしさにびっくりしました。さみしいけど、母への愛情を感じる歌です。この作者はお母様のことをよく詠まれていて、それもなにか、ある側面が見えるような歌がありいいなと思います。

ああ此処にすこし汚れがあるといふ認識しつつすでに十日よ /青馬ゆず
具体的に、と言われる短歌ですが、こういう歌い方はいいですね・・・。汚れを認識しながらきれいにしていない自分を認識してるおもしろさがあります。

どぶ川のどぶでなくって川だったころの面影欄干にあり /丸本ふみ
作者にとっては昔、川とそれにかかる橋はひとまとめにして「川」だったのではないかと思う。欄干だけがとり残されてしまったような寂しさ、作者の寂しさが伝わってくるような歌です。

こんなにも屋根がまぶしくひかること美寿々荘にすむ人知るや /山名聡美
光っている美寿々荘の屋根。作者はそれを少し遠いところから見ている。「美寿々荘」という名前なのでたぶん小さな昔風のアパートのように思う。そこに住んでいる人に、屋根の輝きを教えたいような、そして美寿々荘の人達はその輝きに気がつかないのかもしれない、と思っているような気持ちが切ないです。

客扱いしている街の路地裏を石けりしながら歩いてやろう /山田恵子
久しぶりに帰ってきた故郷なのだろう。自分のほうがこの街をよく知っているんだよ、と石けりをしながら歩く。石けりは小さい頃の自分かな。よく知っている道を余裕で石をけりながら歩く姿が浮かんできます。

本物のスズメと偽物のゾウを見たジャングルクルーズの舳先から /逢坂みずき
普段道でスズメを見ても本物だ、なんて思わない。アトラクションの作りものに囲まれている中、本物のスズメがひときわ本物のスズメにみえたのだろう。小さなスズメにそう思った点がおもしろいです。

通帳の在り処を母に叫ぶ父 錘を下ろすように火を見た /神山俱夫
火事で大変な状況のなか、作者は火を「錘を下ろすように」見つめてしまう。火から目を離せない作者、また作者の目を離さない火の力も伝わってくる表現だと思います。

母と蝉の脱皮を見てた夕まぐれ やわき世界の風に触れつつ /神山俱夫
子どもの頃の夏の想い出だろう。母の着替えを、蝉の脱皮の姿と重ね合わせるように見ている。親であり異性でもある母への思慕。「やわき世界の風」はやさしく通過していく少年の時期、そういうものではないかと思います。

子の影を午後の日差しが引き伸ばすゆたかなる背の若者ほどに /益田克行
ふっと、子どもの未来の姿が見えたような。頼もしく、もしかしたら、ほんの少しさみしさも感じたかもしれない。「午後の日差しが引き伸ばす」というのは、人以外の自然の力に推されるような力強さがある。「ゆたかなる背」もとてもいいな。

重いカバン、重たい顔の朝七時 自分のために普通をこなす /川又郁人
「普通をこなす」。簡単にみえるけど、こなせない時もあったりするから「普通をこなす」にも意思がいる。自分のために、というのが、がんばれ、と言いたくなります。(自分のことをしなくてはいけませんが、つい)

青空へ跳びあがるもの下りるものイルカへ旅の手のひらたたく /菊井直子
「旅の手のひらたたく」がとってもいい。高揚感、解放感、などが伝わります。音もいいです。楽し気。

九十四の母の愛読する雑誌最終号をためらいつつ送る /中村美優
高齢の母が楽しみにしている雑誌が終わることになった。これはさみしいだろう。母と並行して続いてきた雑誌。終ることで落胆するだろう母への作者の気持ちが伝わってきます。

塔9月号 作品1☆彡

10 /02 2018
10月。今日は近くの幼稚園の運動会の練習の声がよく響いていました。音楽、先生のスピーカーの声、笛。


水紋が水紋を消す 夏至前の川のおもてを鷺、発ちしのち /白水ま衣
夏至前の明るさのなかに何かを想っている作者が浮かぶ。水紋が水紋を消す、鷺が発つなどから想いの変化がイメージされて、静かな空間がひろがります。

いつまでも突かれてゐたる毬のごと空咳つづく夏の一日 /國森久美子
毬と空咳。よく結びつけてあると思いました。いつまでも終わらない咳のきつさ、夏の日に他の音もなく咳の音だけが響く。

かしわ屋の息子に髭が生えてから商店街はしずかになりぬ /高橋武司
おもしろい詠み方。「かしわ屋の息子の髭が生えた」ことを時の経過に重ねていておもしろいです。じわじわと、それまでの時の経過が思い起こされます。

したためた挽歌が流れ来るようで午後の早くに浜をはなれる /黒沢梓
すっと、背中辺りになにかを感じてしまう歌。自分が詠んだ挽歌のことと思うけれど、その想いやその世界にとらわれてしまう怖さがあったのだろうか。

川を渡る昼の電車に天国にはいない気がする人をおもった /上澄眠
暖かそうな電車のなかにいて想っているのが「天国にはいない気がする人」。いい人や素晴らしい人、というわけではなかった。でも、作者には印象深い人だった。川を渡る電車は浮遊感があり天国という言葉に通じているように思う。

後任への事務引継が長引きて夜の雨中を置き傘に帰る /後藤正樹
日常の出来事の歌。だけどどこか雰囲気があります。「引継ぎ」「雨」「置き傘」などの主役っぽくない言葉、作者自身も主役というわけではないような一日だけど、そこがかえってしみじみとしてしっかりした実感がある。

大きくも小さくもなき音をたて写真剥れつ梅雨寒の部屋 /清田順子
写真の剥がれる音というのは意識して聞いたことはなくておもしろい歌だと思いました。写真の剥がれる音が大きくもなかったけど、でも小さくもなかった、というところ。梅雨寒の部屋で、なにか遠い過去が、作者からはもう離れてしまっている思い出がすっと過ったのではないかと思います。

ukaji akiko

塔短歌会。ふだんは赤煉瓦歌会に参加しています。スガシカオ好き。気軽に好きなことを書いてゆこうと思います。

プロフィール欄がなぜか二つになっていて直りません。

Happy go Lucky!