塔2月号 作品2(江戸雪選歌欄)☆彡

03 /31 2018
『15時17分、パリ行き』、今日見に行きたかったけど、無理だった。人参、たまねぎ、キャベツを切った。5粒食べた苺がとても美味しかった。



台風のゆふべの傘を見せあつて神事のごとし朝の子供は /有櫛由之
「神事のごとし」と言われれば傘を見せあう行為がなんとなく厳かに感じる。傘を開いたり閉じたり差し出したりの所作。「朝の子供」が気持ちいい。

一日中日陰に座って何もせぬ教員がいたと書かれていたり /小林貴文
何に書かれたのだろう。日誌のようなものだろうか。一日中と書かれてあるのでけっこう長い。日誌の内容も面白いし、自分のことを書かれてあるのを読むのはどんな気持ちかと。

いたきまでのひざかりをゆき淋しいと言はばそれさへ灼きつきさうだ 
/千村久仁子

身体も想いも灼くつくほどいたい。言葉にして出してしまいたいけどそれはいっそう苦しくなるから出来ない。ひざかりをなににも頼らずゆくしかない、そういう想い。

母の手でパキリパキリと板チョコを分け与えられし秋の卓袱台 /太田愛葉
分けられる板チョコや、卓袱台。少し昔の思い出だろうか。パキリパキリが秋の空気という感じ。

桃色の四つの足を前後させ河馬がゆっくり水からあがる /川口秀晴
まるで初めて河馬を見たような詠いかた。新鮮な気持ちを持って詠むとこんなに楽しい歌になるものなんだと思った。「桃色の四つの足」がとてもいいと思う。

皿を洗う髪を乾かす 背に受けし猫の眼差し今は無くとも /清原はるか
日常のことは続き、続けているけど、背にうけていた猫の眼差しがない。背中がさみしいものになってしまった。

その会を止めたらと言われ白雲の走る行方を一人見ている /長野晃
なにかの会を中止したらどうかとの人の意見。白雲の行方、会や自分の気持ち。ままならないものがあるのだと思う。

天井を見ている僕は天井を抱きしめたいと思いはじめた /中村寛之
天井を見ていていろんな想いが去来する。「思いはじめた」がこれから続きがあるような表現で面白い。

笛を吹きいつも何処かを目指しゐてめざせるままに死にたくおもふ /潔ゆみこ
笛を吹くというのはどことなく楽しく心が軽やかな感じ。何かを目指しながらもぎちぎちにならず、最後まで楽しい心でいたい、と思っている。

お大事にそれしか書けず返信し夜はラジオを夫と聴きたり /寺田裕子
「お大事に」しか書けなかった作者。その後、夫と夜はラジオを聴いている。話すというよりは、自然口をつぐむ気持ちになったのではないかと思う。伝えることが出来なかった想いと夜を一緒にいるようだ。

塔2月号 作品2(前田康子選歌欄)☆彡

03 /29 2018
昨日、銀行で番号札が呼ばれるまで設置してある本棚のとこに行って背表紙を眺めていたところ、「食卓の文学史」という本があったので手にとった。厚めの本。ぱっと開いたページが斎藤茂吉のページだった。(もしやこの本棚、私が歌をする端くれの端くれの端くれの…ってこと知ってるのだろうか。おそるべし)など思いながらそのページを読んだ。歌人や歌が載ってるとは思わず手にしたのでちょっと嬉しく。どれか一首しっかり覚えようと思って、

隣室に人は死ねどもひたぶるに箒ぐさの実食ひたかりけり /斎藤茂吉

を覚えた。何の実だったっけ、とかならないようにしっかり覚えた。



ふる里に帰れば母校の野暮ったき制服の子らキラキラしゃべる /松塚みぎわ
野暮ったいと言いながら子らを応援しているような気持ちなんだと思う。「キラキラしゃべる」は作者には眩しさでもあるのかもしれない。

ここからは他人の鬱がよく観えるいち早く秋日取りこむ窓辺 /中村英俊
秋日は静かで寂しい。他人の暗い気持ちを作者も寂しく思いつつ眺めるしかないのだろう。

バス通勤始めて気付く印刷屋の二階に社長の胸像がある /小山美保子
バス通勤で景色が変わった。作者の印刷屋への印象も変わったろう。社長の胸像が二階にあるのはどんな意図からかしら。

実家には祖母伯母母の着物あり箪笥を開けてまた閉じる夜 /白梅
箪笥が、脈々と先祖へと続く入り口のようだ。開けた時に出てくる亡くなった人達の気配、閉めた時に消える気配、そういうものがあるのだろう。

みっしりと陽射しが今日は重たくて葡萄色した日傘をたたむ /田巻幸生
陽射しが重い、という表現。陽射しを吸った葡萄色がほんとに重そうに感じる。

牛乳でココアを溶かす 母親の寝息がふいにいびきに変わる /田村穂隆
ふとした瞬間の捉え方がとてもいいと思った。深まる夜の瞬間。上句と下句の何気ない繋がりであらわされている。夜に一人とり残された感じ。

公園に名知らぬ人よりムクロジの実を受くる手も夕あかりする /長谷仁子
名知らぬ人というのが誰なのかは分からない。手も、作者の気持ちも夕あかりしているところがいいなと思う。

一年間友達だった子を想い苔にまみれた湖へ行く /森永理恵
友達だった、とはどういうことか。離れないといけない理由があったのか、亡くなったのだろうか。どこにも流れない湖の蓄積されていく苔が想いと重なる。

渓谷の水音のみに支配され旅の一夜は何も思わざり /浅野次子
夜に聞こえる渓谷の水の音。他に何も聞こえてくるものがない、ざざざーっという太い音。何か考えようにも水の音ばかり。

一枚の新たな遺影加わりて五人の頬に朝日差し来る /鈴木緑
一枚の新たな遺影。五人の頬に朝陽が差す、というのが生きていた時の関係性を思わせる。そして、作者を見守っているようにも感じる。あたたかい歌だと思う。



桜降らせる雀かな

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03 /27 2018
スーパーの帰り、坂の途中の桜を見上げながら自転車を押し歩いていた。

見ているとあれは雀かな、という鳥が桜の枝から枝へ飛び移っている。

雀って意外と桜とあうんだなあとそのまま見ていたら、
くるくるくる~っと桜が萼付きのまま舞い落ちてきた。

くるくる~っ、くるくる~っと次々に落ちてくる。

そういえば、雀は桜の萼のところを噛み切って花ごと落とす、と去年赤煉瓦歌会の人に教えてもらったんだった。私はそれまで花のまま落ちている桜が雀の仕業とは知らなかった。

もともとすぐに散ってしまう桜なのに散る前にぷちっと雀から噛み切られるなんて、とも思うけど。雀がしていると思えばこれも桜の自然な散りかたのひとつなんだろう。これはこれで不思議な景色。小さい子が見たら喜びそう。

3月の思い出① ヒトリシュガーにいってきた2

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03 /26 2018


スガシカオさんのヒトリシュガーツアーはまだ続いていて、10日ほど前にとある街まで聴きにいった。

ひとつのツアーで2回聴きに行ったのは今回が初めて。

2月は息子と友人とで行ったけど、この日は塔のかたと一緒。

私よりもスガさん歴が3、4年くらい長い。歌も触感とかざわっとする感じとかがスガさんと近いと思う。

私の歌にはあまりない要素。

歌会や講演会以外で塔のかたに会うことはほとんどないのでとても楽しかった。

スガさんの話や歌の話も出来て、3月の思い出のひとつ。

塔2月号 作品2(山下洋選歌欄)☆彡

03 /26 2018
春から次男が行く学校。 制服を着ても着なくてもいい学校だけど一応シャツとズボンだけは注文した。制服は各自で採寸して注文する、という仕方。採寸の仕方のプリントを見ながら測ったけど果たして上手くいったのかどうか。巨神兵みたいに腕が長すぎるシャツとかに仕上がっていませんように。

桜が咲いて空気がやわらかい。桜が散るまでには3月号の歌を読めるのか。桜よりもそれが気になる。



細分化された言葉に頼りいる我に夫は三つばかりで /高橋あや子
上手くまとめてある詠み方だと思った。細分化された言葉、キミとかオマエとか?呼びかけを細分化してるならオイとかネエとかだろうか。

世の中に斯くも数多なる嘘があるわたしに少し分けてください /吉井敏郎
嘘の世界も様々だろうけど、きらびやかだったり魅力的な嘘というものも、つけない人はつけない。嘘でもいいから持ってみたい世界、というのかな。

盛り蕎麦を食べてピン札差し出せば濡れた百円三枚もどる /宗形光
レジをしたり給仕をしたり、の人から貰ったお釣り。御冷やが入ったコップも濡れてるだろうしお店の人の手は濡れて忙しい。出したのがピン札というのも濡れた硬貨とギャップがあり面白い。

砂浜に打ち上げられる心地して朝の見上げる日差しが痛い /大橋春人
砂浜に打ち上げられる、というのは力尽きてぐったりしている感じ。いつしか知らぬうちに朝がきてまた始まる一日。日差しの眩しさが痛みとしてが作者の心に切り込んでくる。

独身を謳歌しなさい 母はわれに生活教へず古稀近づきぬ /いとう琳
子の幸せを思い母が言った言葉。作者は言葉通り独身を謳歌したのだろう。「生活教へず」は思い切った詠み方だ。

検診に辛いですかと問われれば普通の辛さと言葉を畳む /井上雅史
「普通の辛さ」に作者の複雑な気持ちを思う。言いたいことも畳み、辛さも畳もうとした作者。

「かぜうどん」聴いて寄席から出た客があったかいのん探して歩く /中井スピカ
「あったかいのん」は方言かな。この言い方が文字通りあったかくていいなと思った。客というのが作者自身のことにも読めるしおもしろい。

もしかして私の遺族となる人の忘れてしまった傘をさし /中村ユキ
なんともおもしろい。私の遺族となる人、というのは既に家族なのか、それとも今から家族になる人か。恋人が忘れていった傘をさして届けに行っているところかな。

夫が寝て心は風にまかせてる 孤独であるが貧しくはない /沼波明美
これも、独特な歌だと思う。「貧しくあるが孤独ではない」ではなくて「孤独であるが貧しくはない」。なにか、かえって真摯な印象を受ける。

鈍色の空に向かひて立つ銀杏けふの心の松明となす /加茂直樹
晴れた空ではなく鈍色の空。そこに立つ銀杏に何か重なるものがあったのだろう。「松明」が頑丈な火を思わせる。

塔2月号 作品2(三井修選歌欄)☆彡

03 /25 2018
昨日の博多駅。新幹線に乗るためにみどりの窓口へ行ったら、何ゆえに??というようなの長蛇の列。みどりの窓口に入りきれない人がコンコースに溢れていて、それを並ばせるために駅員さんが整理していた。予約していたチケットを発券する機械のところはいくらか人が少なくて助かったけど、それでも発車の時間に間に合うかギリギリのドキドキだった。後で知ったところによると、福岡空港で航空機トラブルがあり二時間程滑走路が閉鎖されていたらしい。飛行機から新幹線に変更しようと、たた~っとたくさんの人が移動してきていた、というわけです。


裏の公園の桜が咲いている。



到来の大栗茹でるひとときの憶いに浮かぶ人びとの顔 /水谷英子
大栗を見てうかんでくる人の顔、なんとなく朗らかな感じ。作者にとっては親しみ深い人びとかな。

彼(か)の人の一世のうちに贈られし薔薇より多き祭壇の薔薇 /青垣美和
薔薇。一生のうちに貰う花、また、そのうちの薔薇といったらどれくらいだろうか。亡くなった後たくさんの薔薇に囲まれる。美しいけど悲しさがある。

秋の雪屋根に積もるもはや溶けて雨だれの音今朝しきりなり /姉崎雅子
「秋の雪」ってあまり聞いたことがなかった。秋の雪は日も当たったりしてはかない。雨だれの音もいいな。

街角に幟を立てて署名請う数人のあり荷を降ろし記す /泉みわ
「荷を降ろし記す」がいいと思う。作者にとってはわざわざ荷を降ろして署名するほどのことだった。

積まれたる埃にまみれたギター雑誌を夫と無言で縛り続ける /奥山ひろ美
夫のギター雑誌のようだ。やや緊迫した空気というか。お互いに思うことはありそうで、でも一つの作業をし続ける。

一日の終わりに拾った砂時計上下に激しくゆさぶっている /北野中子
砂時計を揺さぶるとは不思議な気がする。それも「一日の終わりに拾った」砂時計。時間を戻したいなどの気持ちがあるわけでもなさそうで、作者の行動そのままの歌と思う。でもなんか面白い。

雨に雨重ねて秋は もうひとつ失いたかったもの思い出す /紫野春
失いたかったもの。自分にとっては、無いほうがよかった、あると苦しかった、などそういうものか。「雨に雨重ねて秋は」の静かな気配にそれを思い出す、というのがいい。

空いている椅子の静かさ遠い日に長女も次女もそこにて泣いて /津田雅子
「そこにて泣いて」。それぞれどんな思いがあったんだろう。椅子だけが静かに今も残っている。

前を行く背中つぎつぎ道をあけ少女あらわる白杖持ちて /みぎて左手
つぎつぎ、とあるのは、作者から見えない所でもつぎつぎと道をあける人がいたのだろうと想像させる。少女と一緒にあらわれる白杖の白が見えてくるようです。

孤独死の保険あるとうビストロで黒パンちぎり仕組を語る /宮城公子
孤独死の保険というのがあるとして、自分で入るのだろうかとか受け取りは誰だろうとか考えてしまう。黒パンがどこか怖い感じ。

リカちゃん展に行ってきた

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03 /21 2018


福岡市博物館で開催されている「リカちゃん展」に先日行ってきた。リカちゃん誕生50周年記念の企画。リカちゃん人形は1967年誕生のタカラトミーの商品。現在売られているのは4代目リカちゃん。

展示されているリカちゃんの数が予想以上に多くてびっくり。
そして着てる洋服、1960年代、70年代・・・と、レトロっぽく、新っぽく、ほんとにかわいかった。

初代リカちゃんは頭も今より大きく、目が少し大人っぽい。体型もだんだんスマートになっていく。手書きの企画ノートや関節の改良の過程(主に足)、当時のテレビCMも面白かった。

下の写真は企業とのコラボで生まれたリカちゃん。ここは写真撮影OKのとこ。

くまモン。


明星チャルメラ。


スワロフスキー。


博多織工業組合。


リカちゃんのほか、家族、友人、ボーイフレンドも登場する。住居のマンションや一戸建てなど、きらきらとした憧れが込められていたんだなあと思った。私はリカちゃんを一体も持っていなかったけど、「リカちゃん展」は楽しかった。服がかわいかった・・・。

塔2月号 作品2(栗木京子選歌欄)☆彡

03 /21 2018
冬に戻ったみたいに寒くなった。2月号をしてるからそれには合っているけど。


手術後の医師の説明聞きながら妻を離れし乳房を見つむ /熊野温
冷静な詠みかたがいいと思った。「妻を離れし乳房」。乳房が肉体の一部ではなく、命をもっているよう。「見つむ」にいろんな思いがあるだろう。

原宿のあたりにひとりはゐるやうな髪結ひてゐる制吨迦童子 /久川康子
楽しい歌。たとえが面白い。「ひとりはゐるような」が制吨迦童子を身近なものに感じさせる。

歩道橋に袴の裾の華やぎてわれの一生(ひとよ)に寄りて離れゆく /神山俱夫
歩道橋という場所がとてもいい。すれ違った華やぎの一瞬を自分に関わったものとして見る、明るさのような寂しさのようなものがある。

鳩のいる水道で子のひざの血を洗い流せば陽があたたかい /吉田典
鳩、ひざの血、陽、と一首全体に温みがあって、やわらかな感じ。

まんまるの目にとらはるる時を待つフクロフ喫茶に珈琲を飲み /澤﨑光子
「とらはるる」がたのしい。フクロウは置き物かな。顔を上げる度に目が合うのだろう。漢字の珈琲がフクロフ喫茶と似合う。

笛のような楽器を始めてみたい冬 いつも笑っていれば疲れて /田宮智美
笛のような、なので吹く楽器だろう。吹けば無理せず笑わなくていい。自分の素直な心のままに奏でたい、という気持ち。

口開けし柘榴干からぶる静けさを自衛隊機の横切りて行く /永久保英敏
静けさのなかを横切る自衛隊機。「柘榴干からぶる静けさ」からどこか不穏な感じが伝わる。

コンビニの弁当購ひてひとり食ぶベンチに落ちくる枯葉押しのけ /広瀬桂子
しんみりとなる歌かと思ったら、「枯葉押しのけ」の結句。そこがいいなと思った。

墓参り帰りにビール飲む母は後部座席に揺れてほろ酔う /深井克彦
どことなく魅かれる歌だ。運転は息子でビールを飲むのは母。墓参り帰りか・・・。ほっとしたのかな。「ほろ酔う」に母への慈しみの気持ちがあると思う。

人生にBGMなどあらざれば沢庵を噛む音のみ聞こゆ /逢坂みずき
場面場面で思いうかぶ曲はあっても、人生のBGMというのとは違う。沢庵を噛む音。それが自分と地続きの世界ということなのだろう。



塔2月号 作品2(花山多佳子選歌欄)☆彡

03 /18 2018
昨日は長女の高校の文化祭にちらっと行ってきた。
3年生は卒業してもういないので、1、2年生の文化祭。
ちょうど中庭で書道パフォーマンスがあっていた。


もぐもぐ2月号の続き。


長い坂また長い坂唯一のコンビニ消える大和団地の /和田かな子
ため息が出るような長い坂。「大和団地」という名が昔からある団地を思わせる。高齢化でだんだん住人が少なくなりコンビニも消えてしまう。

正解の字幕に「諸説あります」とありぬ何ゆゑこれぞ正しき /益田克行
テロップに諸説ありますと出ても出なくても、見ている側には主張があるものなんだと思った。「これぞ正しき」と思えるほどそのことに精通している作者の熱い気持ち。

共に来し水の流れはめだたないこの分水嶺で別れゆきたり /葵しづか
「めだたない」というのが深い意味合いがあるなあと思った。はっきり見えていないだけで確実に分かれてゆく水。

全員で遺言なきこと確認し母と学びし分数を使う /大江いくの
母親の遺産相続。母親から昔教わった分数をこういう場面で使うことになるとはその時は思わなかったろう。そんな切ないような気持ちが情景だけで上手く詠われている。

行き過ぎてまた戻り来る十字路の わたしはいつも後をゆく人 /岡部かずみ
今回は初めのうちは先頭を歩いていたのだろう。あ、行き過ぎた、と思って引き返し結局また最後のほうになる。なんだかなあ・・と自分を外側から見ている。

水消火器の残りの水をからたちの根に飛ばしきる冬日あたたか /佐藤涼子
題材が面白いと思った。「飛ばしきる」が消火器らしい。シャーっといく水に冬の日差しが光る。やっていて楽しそうだ。

夜半目覚め毛布追加す三泊の遠出の間に秋深まり居り /鳥山かずみ
寒くなる時はすっと寒くなる。旅先の夜中、ひやっとして目覚めたことで秋が深まったと感じた作者。山里の宿のようなそんな雰囲気。

四階から八階に引越しするときの重たい箱と軽い箱ある /春澄ちえ
当りまえなんだけどおもしろい歌。階を変わるだけだから業者にも頼まず自分で荷を運ぶ。重い軽いは重量のことだけでなく、内容物の重要度についてもあるのか。上階への引越しは重力に逆らうし持つ荷のいっそう重い感じ。

泣く前のようにひかりがにじみだす夜のカフェの外側に立ち /山名聡美
上句がきれい。泣く前というのは感情が極まってのことで、「ひかりがにじみだす」という表現がいいなあと思った。カフェの外側だけど、泣いてる人の傍に立っているようにも感じる。

茶話会で「概念」などと口にして白けた感じ 茶を足してみる /与儀典子
ゆるい会話でいい場所で「概念」と言ってちょっとその場が白けた。そう感じて「茶を足す」。その場を乗り越えよう、気楽に行こうという気持ちを足すような仕切り直しかな。おもしろい。

塔2月号 作品1(池本一郎選歌欄)☆彡

03 /17 2018
3月号届いてる。

春のモグラとなって2月号をもぐもぐいこう。


耳のかたちを母にほめられその響き一生この身にほのぼの点る /しん子
言い方を変えれば、作者は目鼻、顔かたちは母からは特に褒められなかったのかも。自分の耳が特別に思えて嬉しかっただろう。「響き」とあるからどんなほめ方だったのか知りたいけど、それは秘密なんでしょう。

稲刈りを見せむと来れば足元の川の流ればかり子は見てをり /鵜原咲子
ほら、稲刈りしてるよ。と見せに行ったのに小さな子は川の流ればかり見ている。思うようにいかなかった、子とのかわいい一場面。

君の手は優しい手だと言いながら息子とシュウマイ包む夕方 /片山楓子
君の手が触れるものにこれからも優しくあってほしいというような願いもあると思う。「優しい手だ」と言われると優しい人になりそうだ。

なにげなく靴をそろへて脱ぐ時につながる吉野の屈葬の墓 /左近田榮懿子
腰を丸める形から思い出した。靴を脱いで出る生身の足もそのイメージに繋がっていく。

冷蔵庫の扉あければ既に灯はともりゐて嘘を平気な顔で /佐藤陽介
「既に灯はともりゐて」。嘘をつこうとしている自分をはっきり確認したような感じ。言葉になる前に嘘が始まっているようなところが面白い。

エスカレーターですれちがひたるをさな児の眼に間に合はざる我のほほゑみ
/立川目陽子

エスカレーターは一瞬、というわけでもないけど短い。「眼に間に合はざる」が絶妙。

破れ蓮のおとろへたればその隙(ひま)に水面の見えて雲などがゆく /竹下文子
色褪せて朽ちる蓮と光る水面の情景。「雲など」にゆったりとした時間がある。

もう会えぬ人としなりてマンションの窓のカーテン外されており /中島扶美惠
もう会えぬ、ということは連絡先も知らないのだろう。カーテンが外された窓が、がらんとした心のようだ。

口の堅い友の怖さのくつくつと煮えながら来る鍋焼きドリア /朝井さとる
口の堅い友。怖いということは友が自分についてのなにかを知っていてもそれを自分に話すことがない、そういう怖さのことか。見据えられる、という感じ。鍋焼きドリアの中の熱さと友の中身が重なる。おもしろい歌。

従妹らのピアノの深き葡萄色弾かせてもらえぬままに売られき /山下裕美
弾いてみたかったピアノだけど、従妹らの大事なものだから言い出せなかった。もしかしたら弾かせてと言ったことがあるのかもしれない。「深き葡萄色」に作者のこのピアノへの憧れの気持ちがあるなあと思った。

ukaji akiko

塔短歌会。ふだんは赤煉瓦歌会に参加しています。スガシカオ好き。気軽に好きなことを書いてゆこうと思います。

プロフィール欄がなぜか二つになっていて直りません。

Happy go Lucky!